皆さんは、オリジナルの自分をしっかり持って生きていますか?
誰かのコピーになったり、
誰かの命令そのまま受けて生きていませんか?
人間は多少なり、周りから影響を受けて生きている訳で、
更に自分も周りに影響を与えたりもしています。
小さな頃の誰かに対しての憧れが、将来の職業になっていたり、
誰かが着ている服や髪型を真似してみたり、
承認欲求を求めたり、周りの目を気にしたり、上部の付き合いや愛想笑いをしたり。
まぁそれのどれもそれぞれの個性であって、
そこに意思を持って主観で世界を捉えている以上、
オリジナルと呼べてしまう訳ですが。
当然ながら、僕もそうです。
僕を僕たらしめるものがある訳で、
またそこに生まれた環境や生物的な個性も相まって、
様々な周りのモノや人に影響されながらHikageと言うオリジナルを生きている訳です。
特に、僕はアートや本から色々な影響を受けてきましたので、
そんなお話を今回させて貰って、知って貰うきっかけになったらと思います。
春が二階から落ちてきた。
この書き出し一行目、全身に鳥肌が立ったのを今でもよく覚えています。
伊坂幸太郎『重力ピエロ』
僕が本格的に本を好きになり、文字を好きになり、文学オタクの海原に導いた小説です。
僕の原点であり頂点と言っても過言ではありません。
この本がなければ今の僕はいないでしょう。
<あらすじ>
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。
家族とは血の繋がりが無いと、家族とは言えないのか。
父親は、遺伝子が違う子を愛してはいけないのか。
視点を家族全体で見ると家族愛をテーマにした感動作のようにも捉えられますし、
最後にはやはり僕も涙ぐみましたが、
本当の父親のこと。
家族と自分との距離感。
自分は何者なのか。
つらさ、悲しみ、憤りの行き場所は。
登場人物の春の心情が、生々しく描かれているのが印象です。
そして、この春の生き方、考え方が当時の僕に大きな影響を与えたのです。
誰よりも孤独だけど、それを家族にも周りにも見せず明るく振る舞っている強さにとても感銘を受けました。
しかし、そんな春の強さの反対の一面の描写があります。
その直後、春がごみ袋を蹴りはじめた。
え、と当惑し、私は足を止める。彼はまず、右足でごみ袋を踏むようにした。鈍く潰れる音がした。足を引き抜くと、さらにもう一度、ビニールの袋を踏みつけた。
それからはめちゃくちゃだった。春は乱暴に足を上げ、右、左と振り回し、ごみ袋を蹴った。自分の脚が左右の二本しかないことがもどかしく、悶えるかのような、蹴り方だった。
ごみ袋が破け、春の靴がそこにめり込む。無理やりに引き抜き、さらに踏む。ごみ袋の山が崩れ、車道に転げ落ちる。春は気にせず、脚を振り回した。茫然と立ち尽くす私には、彼が雄叫びを上げているようにしか見えない。
ここの描写が、酷く僕の胸を締め付け、涙が止まらなかった事を隠せません。
人は誰にも話せない事はあります。
心の内に秘めている事です。特に僕自身も、心に空いた穴の部分を埋める葛藤に、
当時は酷く苦しめられていました。
このやるせないなんとも言えない気持ちを、ここでの描写は神妙に表している気がしたのです。
拳を握って爪が食い込む感じ。
みんな、どこかに消えてしまえって気持ち。
なんで誰もわかってくれないんだって悔しさ。
春は、僕を生き写しているように見えて、
とても他人事にも思えず、彼を特別な目で見るようになりました。
まだまだ春のことも含めて、
この本の話したい事は沢山あるのですが、
ネタバレしてしまいますので。(重力ピエロ好きな人と朝まで語りたい)
こういった春や、春のことを好きなあだ名夏子さん(春をいつも追いかけている季節は夏だから)
血の繋がりのない父、奇しくもDNAの会社で働く兄のような、
登場人物全てに魅力的ですし、
放火とグラフィティアート、レイプとDNA配列、と言った、
重たい内容もポップで爽快感のあるストーリーになっているので、
最後まで飽きずに通して読めます。
最後には、それぞれが交差する想いと、事件の結末、溢れる感動を味わう事ができるでしょう。
僕が二年前に原宿で展示した時の作品は、
この『重力ピエロ』をインスパイアして作りました。
アイキャッチのコラージュアートです。
因みに、この本を読むきっかけになったのは、
当時高校生の時に付き合っていた彼女が一番好きな本でした。
(あぁ僕にも青春があったんだなぁ、、、)
『重力ピエロ』の一行目で、同じく鳥肌が立った女性と結婚するって、
友人に言ったらキモいと言われました。
是非、手にとって読んでみてくださいね^ ^
実写化された映画も良い!
実は、『重力ピエロ』は、実写映画化されておりまして、
これもまた良いんです。
原作厨からすると、
実写映画化ってどうなの?って意見が多くあります。
実際2時間の尺に収めようとすると、
かなりの場面を削らないと入りきらないからです。
『重力ピエロ』実写化も実際多くの重要な部分が削られてしまっていますが、
原作を読んでから映画を観ると、
ストーリーの爽快感は失われていないなって思います。
また、キャラクターが結構イメージに合っている。
特にお父さん。(これは是非自分の目で確かめてください)
映画の主題歌もマジで良いんですよ。
次回は、原点にして頂点-漫画編-でも語ろうと思います。どうでしょう^ ^
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